フランスのりんご名産地。
ノルマンディーを訪れる。

 空路を十二時間、電車とレンタカーで陸路を移動、着いた場所は北海道とよく似た異国の地。フランス、ノルマンディー地方。
 ここは、りんご栽培の盛んに行われる地域。なぜかほっと安心できるノルマンディーの景色にあるのは、風のそよぐ草原、のどかな農道、広々と続く空。北海道と錯覚してもおかしくはない場所だ。りんごの名産に加え、ノルマンディーはフランスきっての酪農王国、そして豊富な魚介類に恵まれた港町として有名である。濃厚なバターや乳製品をはじめ新鮮な食材がすぐ手に入り、素材の良さを引き出す料理や菓子が魅力という、食材宝庫としての顔も北海道に共通しているからだろうか、親近感を覚える。
 フランスと言えば、ボルドーやアルザスなどワインやぶどうの産地が有名。しかしほんだはこの国にぶどうではなく、りんごと共に生きる人々に会いにきた。ぶどうのお酒がワインとブランデーなら、りんごのお酒はシードルとカルヴァドス。ほんだは、第一次世界大戦の時代から続くというシードル・カルヴァドス醸造所
Le Pere Jules(ペルジュール)」を訪れる。本場のシードルは、コクがありながらクドくなく、りんご本来の香りで包まれる。シードルはノルマンディーの人たちにとって、水代わりのような日常的な存在だという。シードルの蒸留酒であるカルヴァドスは、3年、5年、 年、、、と樽の中で年数を重ね熟成、アルコール度数が高くなるりんご版のブランデーだ。このシードル・カルヴァドスは、ノルマンディーのお菓子や料理にはなくてはならない。

 

 

 

 味がたち、香りを引きだしてくれる大切な素材。天候や気温など毎年違うりんごの出来の中でも、常に最高のものをお客様に提供するというポリシーのもと、何代も続いてきたこの醸造所。「近所の人が買ってくれる、このシードルが好きで買いにきてくれる人がいる、遠くから取り寄せてくれる人もいる、そういった人達のためにこれからも末永くシードル・カルヴァドスをつくり続けていきたい」、量産や販路拡大に力を注ぐのではなく今、目の前にいるお客様を大切にする。商売の原点がここにある。

 フランスのりんごの特徴は、日本と違い生ではあまり食されず、ジュースやシードル、菓子や料理などほとんど加工して食される。甘みより酸味、香りの高さがおいしいりんごとされる。目にしたりんごの木はすべて背が高い。人の手が簡単に届かないそれらの木の回りを行き交うのは、牛。その糞が肥料となり、人間の手よりも自然の営みによってりんごを実らせる。
 そんなりんごの名産地で偶然の出会いが引き合わせてくれたのは、テディさんとジュディさん夫妻のアップルクランブル。材料も行程も実にシンプルで、りんごの素材感をしっかりと感じるアップルクランブルだ。何より手が込んでないのは素材がよい証拠。
 L’orangerieというレストランのオーナーであるテディさんとジュディさん夫妻はフランスの伝統料理だけでなく、「お客様に何度もきてもらえるように」と、地元の農家さんと協力し新鮮な食材を調達したり、料理にいつもアレンジや楽しみを加えることを忘れないという。大繁盛ではなく、一人一人のお客様の満足がお店の成功。この日、夫妻のレストランは定休日。にもかかわらず、ばったり出会った日本人のために街を案内しご馳走までしてくれた、オーナー夫妻にもてなしの心をみた。

『お客様と、より近く。』
 国を超えて、共通する志

 ノルマンディー地域圏のリジューという街に宿泊する。その街の小さなお菓子屋さん、Sucree Recreation(レクレアシオン シュクレ)。地元ノルマンディーの食材をふんだんに使用したお菓子と、きれいなアトリエ内・商品のディスプレイが印象的なお店。「パリで修行中に一緒に働いていた日本人から、丁寧な仕事と整理整頓を学んだ」と語るオーナー・ニコラさんとの出会いは強く心にのこる。「いつお客様が来ても、見てもらえるように」と整理整頓が徹底された厨房内。「お客様との距離を近くしたい。伝えたい事が伝わるように」と子どもから大人までを対象に、それぞれの学校や仕事など地域時間に合わせてひらくお菓子教室。国を超えても同じく、お客様とともに地域とともに菓子屋があるのだという事を感じさせてくれる。

 菓子にもりんごにも歴史あるフランスで、今回出会った人達との言葉を振り返り、噛み締める。
 「大切にしてくれるお客様と長く続くように」と語った、シードル・カルヴァドス醸造所。 「同じお客様が何度もきてくれるように、進化を重ねる努力が大切」と語った、レストランのオーナー夫妻。
【お客様との縁が続くように】、それは異国の地にて共感する視点・姿勢・心の軸。フランスで見て聞いて味わってほんだが吸収した、お菓子、りんご、お店のこと。そこには一筋の信念とも言える道が見える。お菓子で人を幸せにする、この道をもっともっと追求していく、ほんだの旅は終わらない。

【海外編】 専務ほんだのフランス視察

 Normandy & Pari〈ノルマンディー・パリ〉